2003年3月31日 NO.62
心を込めて丁寧に語ることの大切さ



 3月21日、アメリカのイラク攻撃が始まってしまった。イラクへの最後通告の直後、小泉首相はいち早くブッシュ大統領への支持を表明。これは我が国の基本姿勢の大きな転機となる。戦後一貫して平和主義のもと日米安保を基軸にしつつ、国連中心主義をとってきた日本の外交。しかし今回、両輪の一方である国連中心の国際協調体制は機能不全。そして、このような重大な局面に至るまで、国民に対して全く説明責任を果たそうとしなかったこの国のリーダー。イギリス・ブレア首相、フランス・シラク大統領などのリーダーに比して、あまりに説明不足。国民のさまざまな疑問はそのまま野ざらしにされ、気分だけが厭世的になっていく。いかなる政策であっても国益に沿うと信じる政策であるなら、逃げることなくしっかりと国民と向き合い、理解を求めることが、政治家の責務ではないだろうか。
 遡って3月3日、名古屋工業大学の柳田博明学長の講演を拝聴。未来に向けての望ましい技術の在り方から、大きく人間・社会について等、まさに簡明な語り口によって示された。その概要をご報告する。


今こそ恐れず怯(ひる)まず囚(とら)われず
説明責任を果たしていただきたい

 アメリカがイラクに攻撃を開始したその前後から、国会はてんてこまい。国連中心主義と日米安保を基軸としてきた我が国の外交の根本を揺るがす歴史の転換点。いま私たち日本はそこに立たされている。
 イラクの惨状。恐怖政治による独裁も、そして戦争そのものも、甚大な破壊と流血を招く。一方、我が国はこの半世紀、戦争の大きな痛手から立ち直り、平和の中で安全と繁栄、自由を享受してきた。そんな日本であればこそ、イラクの今後、新たな局面に至って平和を構築するため積極的に関与しなければならない。
 しかし、ここに至って政府は国民に対して説明責任を果たしていない。小泉さんが日米同盟の重要性を第一義に考えるのであれば、政治家としての魂の叫び、信念を国民にしっかりと伝えるべきである。心を込めて丁寧に、わかりやすく語る。たとえ一時的に世論が逆風になろうとも、恐れず怯まず囚われず、きちんと国民に説明する。そうすれば、歴史は必ず評価する。「出たとこ勝負」「場当たり政治」「その場の雰囲気」の「丸投げ政治」ではなく、真摯な姿勢で我々に語ってもらいたい。さもないと、この国の未来を決める、実りある国会論戦も始めようがない。



時代はよりシンプルさを求めている

 先日、名古屋工業大学、柳田博明学長のご講演、「21世紀日本再興の戦略〜日本発ひらがな工学」を勉強会にて拝聴した。21世紀における技術の在り方、大学改革の行方、そして先生ご自身が取り組まれてきた「賢材研究会」「簡明技術推進機構」「スパゲッティ症候群からの脱出」について、ひらがな工学の勧め、個の確立の重要性等が、具体例を紹介しつつ、まさに簡明な語り口によって示された。
 21世紀の技術のキーワードは3つ。「環境調和」「簡明性」「テクノデモクラシー」である。環境についてはいうまでもないが、簡明とは、デモクラシーとはどういうことか。20世紀において、技術は高度に複雑であることが良いとされ、それはまさに専門家のものであった。技術を独占的に活用し、市場における競争に勝ち抜くための工学が求められていた。しかしここにきて、そういった一部の人によるものという20世紀的な方法論は行き詰まった。どこから始まってどこで終わっているのかが分からないような混迷状況に陥っている(スパゲッティ症候群)。複雑=高級、という価値観は、もはや過去のものである。時代はよりシンプルなものを求めている。力まない、潤いがある、ゆとりがある。まさに「ひらがな」的な工学。狭い専門に囚われることない、しなやかさ。新しい発想による新しい工学を創出するために、大学もまた縦割りの閉塞性を打破し、斬新な体制を整備していく。名工大はまさにその先兵として大学改革を強力に推進している現状が紹介された。
 また、先生ご自身のベンチャー事業の経験を引用しつつ、「個」尊重の社会構造、ベンチャービジネスへの期待が示された。20世紀、大企業による力まかせに集積型の開発から、21世紀、金がなくても意欲があれば(もちろん技術力は必要だが)ベンチャーとして成り立っていくような社会、個の発露と確立に拠る時代の到来を示した。
 そして最後に、いかに内容のあることをシンプルに心を持って伝えるか、智恵のあるいい人の意見ならば孫の代にまで伝わっていく。技術にも、この視点が大切であると語った。
 伴野の所感として、技術も生き方も、簡明=シンプルであることの優位性を再認識した。自殺者が年間3万人もいる、いまの日本。もっと素直に生きていくことで社会はよくなると思う。政治においても、わかりやすく中身の乏しいワンフレーズだけで済ませることなく、「しっかり考え、わかりやすく語る」ということを心がけていきたい。




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